先日。静岡県にある芦沢銈介美術館に行ってきた。
メインは静岡美術館で行われた高畑監督のトークイベントだったのだけれど、駅からほど近くにある登呂遺跡と、芦沢銈介美術館が面白そうだよと促され、訪れたら大穴場!ほんとうに中身の濃い美術館だったので、わたしとしては棚からぼたもち的に充実した時間となった。
参照:高畑作品の背景で織り成す『音楽』との出会い|紡ぎ、継ぐ
「ぼくの家は、農夫のように平凡で、農夫のように健康です。」
この家について彼はこんな風に言っていたそう。ここは美術館から徒歩数分の芦沢銈介さんの移築された自宅。
この家をみて私は、今年の始めに訪れた旧白洲邸となんだか相通じるものを感じた。
和でありながらアフリカだったり。雰囲気として。折衷して混じり合っていてとてもいい感じ。
参照:無駄のある暮らし|紡ぎ、継ぐ
芦沢銈介さんという人物を、今回ここへ行って初めて認知することになったのだけれど、染織家でありながら大の蒐集家で民芸運動や日本民藝館の創館にも随分深く関わった方らしい。
ちなみに日本民藝館のサイトでは『民藝』についてこのように説明されている。
「民」は「民衆や民間」の「民」、そして「藝」は「工藝」の「藝」を指す。彼らは、それまで美の対象として顧みられることのなかった民藝品の中に、「健康な美」や「平常の美」といった大切な美の相が豊かに宿ることを発見し、そこに最も正当な工芸の発達を見た。
日常の中の手仕事によって、使うための道具として生まれたものたち。そんな中から美の追求を始めたのが柳宗悦であり、そこに深く関わりひとつの『民藝』というジャンルを普遍的にさせた中のひとりがこの芦沢銈介さんということだ。
美術館は三連休の中日にも関わらず、本当にひっそりしていた。最初の30分程は私たちだけで、その後に3、4組入館した程度。
一言でいうともったいない。建物だけでもすごく面白いつくりだし、どこか知らない国のことばの通じない町の奥に迷い込んだような不安でドキドキした気持ちになる。
前半の染め物展示のひとつひとつはあたたかくて可愛らしい。それでいてモダン。のれんの中の縄のれんだったり、鯛泳ぐ文着物だったり、風の字文だったり・・・
一度見たら絶対に忘れないしほかほかする。そんな染め物ばかり。本当に見て欲しい。笑
後半の世界中から蒐集したお面や民族衣装、人形などは不気味だけど茶目っ気があって見れば見るほどじわじわくる。
東京の民藝館もいいけれど、満足度としてはこちらの方が異国感溢れていて奇妙で断然面白い!
だからもったいない!
今まで静岡というと伊豆だったり富士山くらいしか印象になかったけれど、今後はもっと「芦沢銈介美術館」を売りにしていったほうがいいと思う。
日本橋高島屋で今日まで、25日〜10月6日まで横浜高島屋で「生誕120年記念
デザイナー芹沢銈介の世界展」が開催されているそう。
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芦沢美術館と隣接した場所には、弥生時代の稲作農耕集落遺跡(登呂遺跡)があり、今から遡ること2000年以上前の暮らしのかたちを感じることができる。
火おこし体験では、ほんの僅かな火の粉に少しずつ空気を送ることで赤々とした炎が燃え上がり感動はひとしおだった。
赤米という玄米も甘くてもちもちしていて、想像以上に美味しかった。
体験から学び直すのは新鮮でたのしい。
わたしたちのご先祖さまは、2000年も前から同じように火を使い、お米を作って食べていた。
ただ、今よりもずっとささやかに。時間をかけて、暮していた。
静岡県に行ったら合わせて是非。
それではこの辺で。
中條 美咲