能楽妄想ナイトin6次元

関東も梅雨入りしましたね。しとしとではなく止めどなくザーザーと・・・

恵みの雨。私たちにとっては足下や荷物は濡れるし、髪はうねるし、濡れた傘を持って満員電車に乗ったりするのはすごく憂鬱な季節なのかもしれません。購買意欲も外出意欲も抑えられ、商売的にはアガッタリ状況でしょう。

多くの植物たちはきっとそんな雨を心待ちにしていたでしょう。
ただ、あんまり一気に降り過ぎるのも不安になります。

一昨夜は荻窪にある6次元という、まさにそうとしか言いようのない異空間で行われた”能楽妄想ナイト”というこれまたかなり強烈(そう)なイベントに参加したので、雨の夜長に少し、そんな異世界に迷い込んだ話を書いてみたいと思います。

6次元さんにお邪魔したのは実はこれが三度目だった。

何年か前。東京に出て来たばかりの頃、カフェとして営業しているところにお邪魔したことが一度あった。二度目は屋久島でお世話になったガイドさんが6次元で「屋久島ナイト」を開催するということで参加。そして一昨夜の「能楽妄想ナイト」。

荻窪駅から徒歩4、5分くらいの場所にも関わらず、ほんとうに”異”なった空気、空間という感じ。時間の流れも含め…。

中央線とか荻窪という場所柄の空気感もあるのかもしれないけれど、それにしても日常からすっぽりはみ出してしまったような感覚になるから不思議。

 

今回は「能楽妄想ナイト」ということで、イベントの告知を知った段階で行こう!と思った。

お能は、今わたしの中で興味があることベスト5に入る位気になる存在だった。

様々な伝統芸能の中でも、取り立てて異様というか、異質な存在感があるように漠然と感じていた(いる)。触れようとしても、その世界は歴史もあり過ぎるし、現代社会に浸りきってあらゆるものを享受出来ることが当然と思っている自分には随分遠い世界のようにも感じていた。

もちろんお金を払えば観に行くことはすぐにだって出来る。でも興味がある→触れてみたい→じゃあ観に行こう!というほど単純な相手ではない気がしたので、一時保留。とりあえずお腹の中であたためていた。

そんなところにこのイベントの告知。(たまたま知っただけ)

今回でもう6回目の開催だったらしい。テーマは「イメージ力!」谷本健吾さんと川口晃平さんというお二人の観世流能楽師の方の謡を間近で聴くことが出来るという。

 

題材は「碇潜(いかりかずき)」と「熊坂」

「碇潜」は平家と源氏が壇ノ浦で合戦をして平家が滅びゆく様を描いた場面を。「熊坂」は熊坂という霊が牛若丸に無念にも打たれて成仏出来ずにいて、それを物語り消え失せるという場面を。

(このように言葉で説明しようとしても全く効果がないのでしょうが。)

 

どちらとも話のあらすじをザーっと教えて頂き、言葉の意味などもイメージしやすいように現代語に訳し、そのようなお膳立ての上でお二方の謡へ。

 

 

たぶんこれも言葉にしたらものすごく薄っぺらくなってしまう。

腹の底。丹田。気が生まれる場所。そんな底の方からぐわーっと波が押し寄せて鳥肌が止まらない。開いた口がポカーン。目を奪われる。思考が停止する。

 

そんな衝撃が一気に押し寄せた。こういうとき、頭では追いつかなくて、身体の方が勝手に反応する。

お能に説明はいらない。

そう思った。

 

通常の舞台で聴いたらもしかしたらこれほどの衝撃はなかったかもしれない。

あの狭い空間で、わずか2メートルばかりの距離で真に受けたから一気に嵌まったんだ。

 

 

あのように死者になりきって謡をうたう時、一体どのような感覚に見舞われるんだろう。

不思議で少しおっかなくて気になって虜になる。私はものすごい体験をしてしまった。

 

 

 

最後に。

 

世の中にはまだまだ知らない世界が山ほどある。

世阿弥という人は何を考え、あのようなスタイル(型)を生み出したのだろう。

おっかなびっくり深めていきたい世界がまた一つ増えた。

今度はお二人の本場である舞台を観に行ってみようと思う。

何事もきっかけが大事。

良いきっかけを見逃さない嗅覚も大事。

直感って案外あてになるのかもしれません。

 

それではこの辺で。

中條 美咲