日が暮れていく。
リンリンリンリンリンリンリン……
虫の鳴き声がする。スズのような、細かやな音色。
気がつけば夏ももうじき終わろうとしていて、
こうして落ち着いて日暮れを過ごすことをしばらくしていなかったと振り返る。
夕暮れ時のしっくり感。
暮れていくのにあわせてほろほろと解けていく感じ、私は好きだ。
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特になにを書こうというでもなく、画面を開き、呟いている。
そういえば突然だけれど、染色家 柚木沙弥郎さんのインタビューから、こんな一節を引いてみよう。
ーー民藝館に行くのは、勉強とか見物とか区別なく、心が静かになる。それはね、柳先生から今に至るまで、一本の志が通っているからだと思う。ドカンと落ち着いていて静かで他と調和しながらそこにある。あるだけで、いろんな理屈を言う必要がない。それを見て「ああ、そうか。柳という人はこういうことを世に広めたかったんだ」と気持ちが納得すると思うんだな。あとから柳先生は「どうして美しいか」っていろんなことをおっしゃっているけど、それはそれ。見て感じるだけ。そんな難しいことではない。手ぶらで楽しめばよい。あまり批評めいたことは後回し。
民藝館には通わないといけないね。時代によって変化はあるだろうけど、観ること。直観だ。それでどういうことを感じるか。
……なるべくグループで行っても一人で風に吹かれてみる。それで考える。納得するというか感じるというか、感じたことが自分の中でどういう風に発酵されていくかね。
ー2017年3月号の雑誌『民藝 特集 柚木沙弥郎の染色作品』より
1922年生まれ、96歳の柚木さん。
今年、6月に放送された日曜美術館「うれしくなくちゃ 生まれない」で度肝を抜かれて、本展にも足を運んだ。
観ること。直観すること。
風に吹かれて、考え感じる。
そんなに悩まなくっても大丈夫。だってそれは、うれしくなくちゃ生まれないから。
柚木さんの言葉は、折に触れて感じていたい。
YUNOKI SAMIRO HP
日本民藝館 HP