雑誌「和樂」が担うジャポニズム

前回に引き続き、今回も雑誌『和樂』について書かせて頂きます。

毎月1日発売の『和樂』
HPにはこのように記されています。

和の世界で和(なご)み、和(やわ)らぎ、和の心を楽しむ--。

月刊女性誌『和樂(わらく)』は日本中から本物だけを集め、正統なスタイルと美しいビジュアルでお届けするハイクオリティマガジンです。自然や日本美術、伝統芸能や職人の手わざなど、汲めども尽きぬ情趣に溢れる日本独自の文化はもちろんのこと、ファッションやビューティ、インテリアなど洋にも開かれた各ジャンルの最高峰を取り上げ、現代女性の暮らしに寄り添うモダンな表現で、高い意識を持つ女性たちの熱い支持を得ています。

日本の女性たちの暮らしがさらに豊かなものとなるよう、『和樂』は今後もファーストクラスの世界をさまざまな企画でお届けしてまいります。是非一度、お手に取ってご覧いただけますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

『和樂』編集長 橋本記一

この雑誌、主な読者層は50代前後の女性ということですが、(最高峰、ハイクオリティ、ファーストクラスとこれでもか!という感も否めなせんが…)私は是非とも若い世代の方達が読むべき雑誌じゃないかと思います。

日本について知っていく上で、歴史や芸術、美学などへ広く興味を引き出してくれるだけでなく、月刊誌にも関わらず、重み・深みがとても際立っているように感じるからです。

それは何故だろう?…と考えてみたのですが、私たちが「残したいニッポンの美」という連載が大きいように感じました。

今月号(5月号)で第五回目なので、まだ始まったばかりの連載かとは思いますが、ここに登場される方の言葉と「残したい日本の美10」で語られる内容は本当に深みがあって気持ちを正される思いがします。

五回の連載で登場された方は以下になります。

第一回 細川護煕  心安らぐ下町の風情、そして豊かなこころ育む躾と教育
第二回 坂東玉三郎 繊細さ、清潔さ、丁寧さ…日本人のもつ所作と作法と心の美しさ
第三回 千住博   日本画は自然との対話。自然の奇跡に感動し、それを作品に託す
第四回 観世清河寿 和歌を愛でる心が育てた繊細にして優美、折り目正しい美しさ
第五回 馬場あき子 ”うめ もも さくら”言葉のリズムに春を感じる日本人の感性

細川さんと、千住さんの回は読めていないのですが、皆さん本当に言葉が綺麗です。
綺麗なだけでなく、既に自分の”型”を完成させた方たちなのでその言葉には重みがあります。

今月号に登場された馬場さんは日本の美についてこのように語ります。

”日本の美とはことごとく、すでにある型のなかに入っていくことから始まっている。”

”日本の美において個性は、出発点ではなく到達点なのです。
ーだからわかりにくい。”

そして歌人である馬場さんが、私たち(今の若い人たち)にぜひこれだけは身につけてほしいと願うもののひとつが百人一首だそうです。

百人一首の話題から続く文の中で、戦争に行きシベリアに抑留されたおじいさんとのやり取りを書かれた部分があるのですが、とても印象的でした。(P26です)

あえて具体的な心情を語るのではなく、自分の知っている”句”にその全てを託してしまう。

”五七五”という型に嵌めてしまうことで聞き手側は、本人から語られなかった様々な想いを想起させられる。

 

とても潔く、一気に普遍的なものへ昇華するようです。そうすることで語ることも出来ず心に深く染み込んでしまった想いたちも浄化出来たのではないかな。

そんな風に想像してしまいました。

 

最後に。

人との出会い。が自分の人生を大きく変えていくことは間違いないように思います。

どのような人たちと関わり、過ごしていくか。それによって、元いた場所からは想像も出来なかった世界に踏み込んでしまうということも往往にしてあることでしょう。

私は自分の指針となり、道に迷ったときにひとつだけヒントを与えてくれるような人生の大先輩を見つけたい。と折に触れて思っています。

宮崎駿さんや、内田樹さん、白洲正子さんや司馬遼太郎さんのような方々と挙げ出したらキリがありません・・・

宮崎駿さんの場合はヒントというよりけちょんけちょんにやられてしまいそうですが笑

それでも現実でそのような方たちと直に対面してお話が出来たらどれだけいいだろう。よくそんなことを考えますがそれほどの方とお会いすることはおろか、接点を持つことさえ容易なことではありません。

だからわたしたちはそんな人生の大先輩の考えに少しでも触れようと、本や作品を通してその人の生き様を垣間みて、そこから多くのヒントを得たり純粋に体感したりするのだと思います。

この「和樂」にはメディア的に有名・無名関わらず日本と接点を持ち、ひとつのことを追求してきた大先輩の方々が多く登場します。

そんな多くの今まで知らなかったけど、日本と深く結びつきながら生きて来た人たちに触れられて、日本美術や芸術を知るきっかけになる(写真の見応えも凄いです!)完全保存版の雑誌だと思っています。また、この連載は今後も続けて欲しいです。

前回も特集「千利休、何者ぞ?」には触れず、今回も「『書』こそ最高のアートだ!」に一切触れられていないのにこの長さ・・・という結果に終わりましたが、まだまだジャポニズムは始まったばかりのようです。

編集長の橋本さんも今後の日本ブームについて以前このように語られています。
現代は第二次ジャポニズム!

今年に入り、電子版も始まったようですので興味のある方は是非。

それではこの辺で。

中條 美咲