近くて遠い、三浦の三崎。

横浜から下道でおおよそ1時間。
漁業と農業がどちらも盛んな海辺の町は、近いようで遠く、異国の風情を感じたりもした。

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春の海 ひねもすのたり のたりかな  与謝蕪村
(はるの海は一日中ゆったりとうねっていて、まことにのどかなことだ。)

先月PARISmagの取材で訪ねた海が大好きな女性との出会いでこの句を知った。
参照:「海も山もある。神奈川の葉山で1年暮らしてみました。」|PARISmag

音の響きやリズム、のたり感など、これ以上はありえないというところで完結されている芭蕉の一句はそれからしばらくわたしの頭のなかでリフレインし続けている。

 

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先週末。レトロな雰囲気が漂う、京急油壺マリンパークに行ってきた。(新聞をとっているとよく美術館や周辺施設の入場チケットなどがもらえるという。)
油壺の由来を引いてみたので参照。

1516年新井城に籠もった三浦一族は北条早雲の大軍を相手に3年間にわたって奮戦するも、三浦義同(道寸)を始め将兵は討死に、残る者は油壺湾へ投身し、湾一面が血汐で染まりまるで油を流したような状態になったので後世「油壺」と言われるようになったとされる。また、湾内の水面が油を流したように静かだからという説もある。ーWikipediaより

1968年に開館したというこの施設、いい意味で時の流れに残されて、小さいながら働いている人たちの温度がわかるあたたかい距離感で、47年目の今も日々運営されている。

わざわざ遠くから、ここを目指してやってくる人は以前に比べると少なくなったかもしれないけれど、近くに住んでいるファミリー層には、安定した人気があるのではないかと感じられる元祖水族館だった。

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せっかくなので水族館の裏側ツアーにも参加して、巨大な回遊水槽を真上から覗いてみたり、面白い体験にもなった。

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そして何を差し置いても強烈なインパクトとなったのは、一匹の犬とイルカとの出会いの場面に遭遇した事件?!。

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写真では伝わらないのが残念すぎるけれど、この一匹の犬。悶絶するほど激しい雄叫びをあげ、ものすごい勢いで興奮し水槽を舐めまわし、猛烈な勢いでイルカに猛アタック。イルカもそれに答えるように、そばに近寄り、お腹を上に向けて受け入れようとしてくれているのが伝わってきて、本当に興味深い光景だった。

ご主人も驚きながら、かなり長い時間その戯れに付き合っており、ようやく一度水槽から離してよだれまみれの水槽をタオルで拭き取ったものの、イルカから遠ざけられても尚叫び続けるワンコの様子はなんだかもう面白いの域を超えていて、動物の本能に触れたような特別な体験になりました。

犬もイルカも人間が想像するよりずっと頭がよいんだなぁと。

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カワウソと赤ちゃんの交信も然り。

そうして油壺マリンパークを後にして、周辺の海を目指して車を走らせていると、一帯には広大な畑が広がっていたので、すこしばかり寄り道遠回り。

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海が間近とは思えない風景に、不思議な感覚。

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南の国に迷い込んだような道の先には真っ青な海。

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採れたての春だいこんに思いを馳せながら・・・

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人に見られることを意識していない自然さが、意識し尽くされた街や人とは違って魅力的に映るのかもしれないと。

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そんなことを思いながら帰り際、旧伊藤博文別邸を訪ねれば、計算の行き届いた日本の数奇屋づくりはやっぱり美しいなぁと感じる矛盾。

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窓の外、海はすぐそこ。

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春の海 ひねもすのたり のたりかな・・・

横浜から1時間。
手のひらサイズのカメラを携え、身近なようでずいぶん遠い、三浦の三崎をめぐる旅。

 

 

 

 

 

それではこの辺で。

中條 美咲