伊勢・奈良で出会った魅力ある木々たちを紹介していこうと思う。
古来から豊穣や命の象徴・信仰の対象として「木」はまつられてきた。
スペイン南部のどこまでも続く、乾いたオリーブの大地とは比べものにならないほどに、このくにを見渡してみると、緑の深い木々で生い茂っている。
存在感のある朴訥と佇む「木」に出会うとついつい立ち止まり眺めてしまう。
そしてこの地域の木々は驚くほどに豊潤な姿のまま、そこに根を生やして生きている。
それはもう随分長いあいだ。100年も200年も以前から、場所を移ることなくその場所に居続け、あらゆるものたちを見守っていることだろう。
時折わたしは「見ること」ばかりに気をとられ、「見られている」という感覚をすっぽり抜け落としているけれど、この場所では多くの「木」の視線、その体内に包み込まれているような錯覚を覚える。
彼らは主張もせずに、大地を鷲掴み、高くそびえるその体を支えつづけている。
どうしたらこんなかたちになることができるんだろう。
不思議でたまらない。。
これだけまっすぐに、ただただその幹を伸ばしていく一方で、地面の下に伸びた根はどのような状態で張り巡らされていることだろう。
そして人々は、むかしも今も変わらず神様や仏様に、平和や豊穣、恋の行く末の祈りや感謝を捧げ続ける。
とても長い間、いつでも見守ってくれていた。
安心感と安定感の影の立役者である彼らの存在が、わたしたちには欠かせないのだろうと、そんなことを感じた旅でもあった。
それではこの辺で。
中條 美咲