先日、上野にある東京国立博物館に行ってきました。
以前にも二回程訪れたことがありましたが、いずれも特別展だったため、常設展は今回が初めてでした。
国立博物館は本館を始め、平成館・東洋館・法隆寺宝物館・表慶館・黒田記念館・庭園、茶室・資料館に分かれており敷地が非常に広大です。
上野公園の一番奥(上座にあたる位置でしょうか)に鎮座しており、上野全体を見守っているようなどっしりとした佇まいをしています。
しかしながら今回は午後の訪問だった為とても全体を鑑賞する時間はなく、本館のみであっという間に閉館時間を迎えてしまいました。
なので、ここでは本館の内容のみ。少しばかりご紹介させて頂きます。
本館は縄文時代〜江戸時代までの〈日本美術の流れ〉を時代の流れに沿って展示されています。
国宝や重要文化財も多く、日本の美術館では珍しく、撮影可能な展示物が多いです。
〈仏教の美術ー平安・室町〉や、〈禅と水墨画ー鎌倉・室町〉〈茶の美術〉〈能と歌舞伎 能「西行桜」にみる面・装束〉などなど・・・時代背景と合わせて、そこで栄えた美術・芸能を知ることが出来るので、私をはじめ、日本美術初心者でこれから徐々に理解を深めていきたいと考えている方達にはもってこいの施設だと思います。
特に印象的だった展示は伊勢物語の絵巻物です。
ほんのり淡い色使いと繊細で柔らかい”ひらがな”中心の文章は見ているだけでうっとりしてしまいます。なんといいますか、恋心を抱き始めて間もない頃のふんわりとした感覚です。
こんな風にきれいな色気のある文字で、手紙のやりとりなどしていたら、きっとそれだけで愛おしくなってしまうではないか!と過去への妄想は膨らむばかりです。
そして絵巻物のこれまたロマンチックなところは、今のように冊子をめくるのではなく、少しずつ少しづつ右から左へ流れるように挿絵と文章が最後まで続いていくというところです。
絵画を時間の経過で捉えるこのような表現方法は、世界でも類をみない日本独自に発生した方法だそうです。
本館のご紹介を・・・と言っておきながら、絵巻物の魅力が印象的過ぎて、こちらがメインになってしまいました。それ以外にもとても興味深い展示ばかりだったのですが、書き始めるとまた長くなりますので、その他に印象的だった展示についてさらっとご紹介します。
・太刀魚と日本刀(太刀)がそっくりすぎること
・能面を前にすると本当に吸い込まれそうになる
・千手観音菩薩立像の前に立った時、思わず手を合わせたくなってしまう衝動
〈東京国立博物館HPより〉
などなどです。
ざっくりし過ぎていてほとんど説明になっていませんが、本館しか訪れていないにも関わらず相当な満足感でした。
3月25日からはこれまた興味津々企画「栄西と建仁寺展」が始まりますので、その際にはお庭なども見て廻りたいと思います。
最後に・・・
平安から室町にかけて栄えた宮廷美術では文字が巧みであること、和歌が上手であることは非常に高い評価を受けたそうです。
このようにその人の内面が滲み出るもの、人の手が作り出したものはどれだけの年月を経過しても、温かみを感じますし、そこに書かれている内容以外から想像したり、察しをつけるための情報量が限りありません。
最近では文字を書く機会そのものが減ってしまい、手紙を書くことも殆どなくなってしまいました。とても残念なことです。
自分の手を通して生まれたものが、脈々と地下水脈を辿るように過去から今へ、またその先へ紡がれていくというのはとてもいいなーと改めて感じました。
また少しずつ、自ら率先して手書きの文化を復活(?)させていこうと思います。
それではこの辺で。
中條 美咲