生き様、例えば「花」をいけること。

西荻窪にあるGALLERY みずのそら  で、年末を締めくくるイベントとして「花いけLIVE vol.2」が行なわれた。

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花道家・アーティストの上野雄次さん、フローリストの西澤力さん、華道家の平間磨理夫さん。
三人の花のいけ手がそれぞれの持ち時間の中で、空間と器にあわせてお客さんの前で花いけを行っていく。というもの。わたしはアシスタントとしてイベントに参加。(ちなみに上の写真は作品ではありません。)

上野さんと平間さんはここ最近都内を中心に地方や海外でも公演を重ねている花いけバトルの主要メンバー。上野さんは先日NHKのあさイチで「紅白花いけ” 生 ”バトル」に出演されたり、台湾で花いけ教室を開催されたり、精力的に活躍されている。
平間さんは年明けにDAIKANYAMA T-SITEで行なわれるイベントで、「新春 花遊び」というワークショップを行なうそうだ。
西澤さんは過去にフローリストレビューで優勝の経験もあり、去年は専門誌「月刊フローリスト」の表紙を一年間担当されていた。花いけバトルに出演したこともしばしば。でも基本は街のお花屋さん。

わたしはそんな西澤さんのお店で、手伝いをし始めてそろそろ二年になろうとしている。花屋としての才能はみすぼらしいばかり。

自分の身近な存在について、文章にするのは気恥ずかしさの方が圧倒的に勝ってしまい公平でなくなってしまいがち。(そして自分より圧倒的に先を生きる人たちのことを客観的に書くなんておこがまし過ぎる。)なのでなるべく避けてきた。

けれどそれ以上に、この三人は(文字通り三者三様に)もっと多くの人に知ってもらわなくちゃならない存在だという想いが圧勝。拡散力がないので、結局のところ自己満足に過ぎないかもしれないけれど。それは一先ずおいておく。

 

あくまでも冷静に、そして生々しく。
花をいける三人の彼らについて少しばかり、書いてみようと思う。

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画像引用元:GALLERY みずのそら

千利休は、歴史上の人物として一度は耳にしたことがあるだろう。茶道界、生け花界、日本の美意識に対して大きな影響を与えたひとりであることは今となっては揺るがない。そうはいっても実際に、なぜこの人物がこれほど長い間、日本の文化と美意識を背負って今に語り継がれる存在となったのか。実際のところ、ほんとうの意味では誰も知らない。

わたしはこの三人の花をいける姿を通じて、歴史上の千利休も偉大だったのだろうけれど、それ以上に目の前にいる彼らもそれに負けず劣らずの姿を今の時代の中でむき出しになって、指し示してくれているんじゃないかと思えて仕方が無い。

作品の素晴らしさについて語れる資格はないとしても、その生き様をひとりの目撃者として語ることはできる。

これは花をいける姿、その作品を通してわたし自身が目撃しつづけているひとつの記録。記録はいずれ誰かの目にとまり役に立つ日もくるかもしれないけれど、その大半は誰の目にも留まらずに堆積していく。

今は幸福なことに、現在進行形で彼らの生き様を傍で感じ続けることができる。自分が語るよりも実際に足を運び、その場に走る空気とそこで生けられる花を目でみて、全身で受け止め、肌感覚で感じることができる。そして多分、同じ花・同じ空気を再現することは本人たちにも不可能。

 

彼らをみていて感じるのは、どうしてこれ程までに「花」に真剣なのかということ。
それ以上でも以下でもない。

魅了されて取り憑かれてひたすらに向き合い考え続け生きている。

なぜ人は「花をいけたい」と思うのか。それはもしかしたら人が生きていく為の本質。いのち。問いかけ。みたいなところにダイレクトに働きかける行為そのもの。そういう意味では思想で体現というよりは、「花」や「お茶」など何かしらの媒介を通して哲学を深めていく方が日本人には馴染みやすいのだろう。そしてそういった根本的な問いかけは、時代やかたちは変われど中心の部分は途絶えることなく今に継がれこれからも続いていく。

立ち位置の違いや現実的な生活をしていくということから、表面的には全く異なっているようでいてトライアングルのように影響し合い惹かれ合い刺激し合っている。
その空気を傍で感じることができるという喜びと、もっともっと多くの人にこのような面白さ、ドキドキ感、儚さetc…のような生き生きとした体験が広まっていったらいいなと思う。

上野さんの言うように、大げさじゃなくそこに感動が生まれたら武器など必要はなくて。誰でも表現者になれる時代だけれど、求められる表現者は世の中に出て行かなければいけない。
それは自分のためというより長い目でみてもっと多くの人の為になることだから。

関連:素直に生ける、実感で生きる|紡ぎ、継ぐ

 

わたしは砂田さんのようにして、この三人のドキュメンタリー映像をつくってみたい(みてみたい)と心底思った。

そしてこれからもあらゆるジャンルにおいて「夢と狂気の王国」が現れることを求めるばかりじゃ魂もかれちゃうわ。・・・なので生み出す一助になりたいな。と思います。

次回は一年を振り返ってのまとめが書ければ(間に合えば)いいけれど・・・
今年も残り、あとわずか。

 

それではこの辺で。

中條 美咲