カテゴリー別アーカイブ: 旅を通じて

昭和のふゆと、大根と。

冬は「ふゆ(増殖する)」の季節である。

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”初期の日本の市場では、三種類の交換がおこなわれていました。市場は山から霊威ある精霊の化身を迎える「接待(イツ)く」庭と考えられるような特別な場所に設営され、そこには山の神をあらわす装束を身につけた山人が、「山づと(山からの贈り物)」をもって、群行出現したことが知られています。山は、里に暮らす人々にとっては、おそるべき霊威に満ちた領域で、そこに満ち満ちている眼には見えない霊的な存在が、市場にあらわれて山づとのような象徴物を、里人との間で交換するというのです。
また市場は歌垣のおこなわれる場所でもありました。若い男女が近隣や遠方からも性的なパートナーを求めて市場に集まり、そこで歌垣を開いて、気に入った相手を探すのです。そこでうまくいくと、将来の結婚相手がみつかります。結婚は女性を仲立ちにして、集団同士が結びつきをつくることを意味していますから、ここでも市場は社会的な交換を実現する場所だということになるでしょう。(中略)
 日本の事例では、市場はきまって冬の季節に開かれた、と折口信夫は書いています。冬が「ふゆ(増殖する)」の季節であったからです。”

中沢新一著『野生の科学』第5章 トポサイコロジーより

昭和の冬はまさにそう、増殖の”ふゆ”だと合点しました。 続きを読む

収穫のウタ〜山咲み〜

春に植えた、小さくてひょろひょろとしたみどり色のイネたちは、秋になり収穫の時を今か今かと待ちわびています。
見渡す限り黄金色にかがやくその圧倒的なまでの色づき加減に、どうしようもない喜びが湧き上がるばかり。

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人々は大地や山や川、風や自然のかみさまに祈りと心からの感謝を捧げ、収穫のときに入る。 続きを読む

道半ば、道の駅。

ここ最近、溢れる感情のようにして、勢いに任せてことばを紡ぐことが、極めてむづかしくなっています。

せっかく、直に多くの場所に足を運び、人と出会い、話を聞いて、次につなげていくための足跡を残してきているにもかかわらず、肝心なわたしの足元がふらふらと揺らいでいる場合じゃないでしょうに。。

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と思えば思うほど、静かにじーっと、奥の方に控えてしまう夜行性の動物のようになりすました、もうひとりのわたしの存在を、ここに向かうわたしは見つけます。

さてさて、どうしたものでしょう。
まだまだスランプにも満たない、けれど、なかなか厄介な側面に直面しています。 続きを読む

宍道湖のあお。〜プロローグ〜

旅はどこから始まるのでしょう?

考えたことが、あったようでなかったようで。

−−−

今回、島根県出雲市から、大田市温泉津、松江市の手しごとを巡る旅(フィールドワーク)のプロローグは、後にも先にも、”宍道湖のあお。” でした。

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新幹線でも飛行機でもなく、窓の外を流れる景色に立ち止まり、寄り道をして。

これから出会う人や目にする出来事を予感させる、そうした導入効果としてのプロローグのあるなしは、旅の印象そのものに大きな影響を与えるでしょう。

 

今はまだ、上手な言葉が見当たりませんが、

宍道湖のあおは、わたしの記憶に確かに記録されています。

 

中條 美咲

 

鎧を外し、まろやかなとろ火を。

重たく身に纏っているひとつが、「思い込みの鎧」ということに気づかされるばかりの今日このごろ。

どこまでいっても「わたし」としての一人称の視点が、こんなにもわたし(自身)を苦しめ、身体を重たく纏い付くしてしまっているというのは、言われなければ気づけなかったことである。

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・・・

それと同時に、そうしたことを目の当たりにしたことで、より一層、本来の偏りがちのバランスは歪みを極め、一種極限的な力を発揮することにもなる。。

(もちろんそれは、あまり良いことだとは言えません。) 続きを読む

心を射抜かれた、ことばたち。

こんばんは。
夜も深い時間。途方もなく電気を消耗する日々に逆戻り。ヨクナイ、ヨクナイ。。。

まだまだ旅の気分を抜け切れていない時分に、昭和村で取材したからむしの記事を書き起こしたり、レポートをまとめたり、現地で興奮して反射的に受け取ったのとはまだ違うかたちで、ひとつひとつ、一期一会を振り返っています。

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きちんと振り返るごとに、少しずつ染み渡っていくので、やっぱり受け取って終わりにするのはもったいないなぁと再確認して、今後はどうにかこうにか、そうした土地の人たちのことばや暮らしの景色を発信していけるような土俵をこさえてみたいなぁと、もくもくした構想は膨らみながらも、現実的な段階を億劫に感じて、もくもくもくもく…。まだしばらくこの雲は、肥大化していくことが予測されます。。 続きを読む

物語というのは、往々にして。

久しぶりに自宅の机に座り、ほっと息をつく瞬間。
帰ってきたなぁ〜。という、なんとなくしみじみとした感を覚えながら、それでもまだ後の祭りにしばらくは追われそうです。

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現実的にも観念的にも、「も〜うお腹いっぱい!」
バクバク食べて、ゴクゴク飲み込んで、むしゃむしゃ咀嚼する。
消化してる暇もなかったので、内臓はだいぶお疲れ気味。。

夏はたくさんの野菜が採れる。夏はたくさんの虫が蠢く。有り余って、おいしいところだけつまみ食いしても、翌朝の畑には、たわわの夏野菜が収穫のときを待ち望んでる。 続きを読む

大丈夫。まだ間に合います。

いろんなことがありました。
人生ってどこまでもどこまでも深く広く入り組んでいて、深めれば深めるほどに、暗くてしんどくなっていくかといえば、ある瞬間に急に光が差し込んで、びっくりするような開放感を味わうことになったりもして。

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そのどれもが自分ひとりでは行き着けなかった場所であり、出会えなかった人であり、気づけなかったことだと思えば思うほど、ひとつひとつのご縁がとても愛おしいもの・ありがたいものに感じられるようにもなって。

ことばの無力さをひたすら痛感しながらも、こうして稚拙に、ことばを信じて紡いできてよかったと、こころの奥底に、ストンとひとつの小石を置くような気持ちで、この1年間の出来事をするっと振り返ります。

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昭和村スタンダードを探る。

重たい瞼をこすりながら、現地リポート!・・・

ではありませんけれど。。
あまりにもたくさんの洗礼を浴びた今、ことばに残しておけること(が少しでもあるとしたならば)をさらりと、一旦頭を整理するように、走り書き的に残しておこうかなと思います。

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わたしは今、福島県奥会津地方に位置する昭和村という、小さなようで以外と大きな、由緒正しき(それこそ使い古されたことばのひとつ)” 原風景 ”が今も生き生きと、人々の暮らしと調和した村を訪れています。 続きを読む

自分の感受性くらい…

茨城のり子の有名な詩の一片は、タイトルの通り。

まん丸に追いかけてくるトンコロピーなお月さまや、今にも真っ赤に染まって溶けてしまいそうな夏の日の夕焼け、むせるように肌にまとわりつく湿気を含んだ空気とか、足元に痒みと共に記された幾つかの赤い斑点。

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同じ木は木でも、色も違えば質感も違い、成長の速度、風や光の好み、わしゃわしゃだったりすっきりだったりしゃきーんだったり・・・

そうしたあらゆる自然の要素に、背中を後押しされるように、づんづん・ずんずん。 続きを読む

コツとコツ(責任とか、継続とか。)

責任とか、継続ということが久しく苦手だった。
「だった。」のではなく、今も苦手「だ。」

 

責任とか継続は、続いていくこと、繋げていくこと、積み重ねていくことの重なり合いで成り立っている。
成り立っているというよりむしろ、「継続」していく先に、自然と伴う「責任」があるのかもしれない。 続きを読む

島でうまれ、島でそだち、島を出て、島に帰る。

瀬戸内の小さな島・豊島。

その日は朝からザーザーと、強い雨が打ち付けていた。

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前日に泊まった民宿は、築80年の古民家。古民家と聞くと聞こえはいいけれど、それは掃除や手入れ、あらゆる目線が行き届いて管理されている場合であって、島の古民家はなかなか濃ゆい。

ふだんから鍵をかける習慣はないようで、至る所の窓や網戸の隙間から、多くの蚊や蜘蛛、虫たちの侵入があることはどうしたって仕方がない。人間以上に、人間以外の生き物たちの息遣いがそこかしこから感じられる、豊島は緑深いそうした島だから。 続きを読む

瀬戸内のきわ、豊島の景色

月曜日、朝から雨が続いています。

最近、和歌のリズムに心をほだされて、あのようにほろほろと心地よいリズムを思いのままに口遊めたら、さぞ気持ちがよいだろうなぁと憧れは募ります。

はるかなる岩のはざまに独り居て人目思はで物思はばや 西行

いにしへをしのぶとなしにふる里の夕べの雨ににほう橘 源実朝

 

とても直感的で、波にゆらめくようなリズム感があって、いつの間にか消えていくなかにある移ろいだったり。
日本人の美的感覚って、常に揺らめく時のなか、付かず離れず、凡ゆるもののあわいに身を委ねて夢現つ、みたいなところにあるのかしらと思えたり。

小豆島に引き続き、豊島の景色。
何もない島だけど、とても好きな島。 

DSCF5972 続きを読む

瀬戸内から見えるもの 〜小豆島〜

先週末、(もう先週末ね…)訪ねた瀬戸内・四国の景色をぽろぽろとお見せしていきます。

瀬戸内はとても気に入ってしまって、きちんと文章にもしてみたいし、もう少しじっくり知ってみたいところ。そんな場所でもありました。

~小豆島での道すがら~

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連なる島々と、ぴょーと白くのびる波。
ゆらゆらぷかぷか、揺られていても飽きることないそんな時間。 続きを読む

朗読から動き出す ”ものがたり”

i love you  ~

という歌い出しで始まる、トウヤマタケオさんのピアノ伴奏曲に合わせて、その物語は確かに立ち上がり動き出した。

翻訳家・柴田元幸『MONKEY vol.6』刊行記念ツアー

パトリック・マグラア『オマリーとシュウォーツ』。

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柴田さんの朗読の息遣いは荒い。
流暢に文字を追って読んでいくというのではなく、物語の奥までぐーっと入り込み、そのものになって躍動し語り始める。猫背な容姿でひょろりと立ち上がり、鋭く何かを捉えている眼差しからは、恐ろしいような、不気味な空気すら感じられた。 続きを読む