京都・奈良について続くと思いきや・・・。
昨日参加させて頂いた、「未知の身体世界へ 養老孟司&内田樹トーク(司会・森田真生)」イベントがあまりにも鮮烈だった為、こちらをはじめに記しておくことにします。
このイベントは本日、5月30日に新潮社から同時発売のお二方の著書『身体巡礼』『日本の身体』刊行記念として企画されたようです。
参加費は3500円だったのですが、この二冊の本が配布されるという特典付き・・・。信じられない程の大盤振る舞いといいますか、長い歴史と大きな母体のある会社は違うなぁと!
告知を知った瞬間に「これはいかねば!」と後先考えずに申し込みをして正解でした。
会場には蒼々たる顔ぶれの招待客の方々がいたりと。
随分尊い世界に足を踏み入れてしまったような気持ちの高まりでした。
トークショー自体はおよそ1時間半。手のひらサイズのノートに会話の要点を訊きこぼさぬようにメモをとること8P。
内容についてはおそらくこのイベントに参加された方や、いずれかの媒体で取り上げられることと思うので、お三方のトークを見て、訊いて、会場の空気を直に体感した中で感じたことを少しばかり書き残しておこうと思います。
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一度もお会いしたこともないばかりか、自分など到底足元にも及ばないお二方を「さん」呼ばわりするのも失礼極まりないことのようにも思えるが、「先生」と呼べるほどの関係性でもないのでここでは「さん」呼びをさせて頂くことにする。
養老孟司さんは上下白地の(麻のような少し軽めの素材にも見えた)、内田樹さんも紺色に白シャツというスーツで登場。スーツといってもお二人ともノータイでとてもカジュアルに馴染んでいる。
養老さんは髪の毛が白髪なこともあり、なんだかとても神聖な雰囲気だった。
内田さんは武道家として、日々”身体”を使われていることだけあって、スーツがとてもお似合いだった。(身体が完成されている方は何を着ても似合うのかもしれない)
登壇後、話は読書情報誌として発行されている〈波〉という雑誌に載せられたお二人の”非同席”対談(著書を通じて各々の向かう先)の感想から始まる。
向かって左から司会の森田さん、養老さん、内田さんという並び順。養老さんが真ん中なのは必然ではあったのだろうが、本当に養老孟司という人物はそこにただ”居る”だけで瞬時に全体の調和を生み出してしまう。この圧倒的な引力のようなものはどこから出てくるのだろう。
私はしばしば養老さんばかりをじーっと観察してしまった。
養老さん曰く、ふたりは世の中の役に立つことを熱心にやっていて感心する。自分は役に立たないことが好きなので反省した。内田さんは真面目だし社会性が高い。俺は何を思われようが全く気にならない。関係ないと思っている。と
養老さんの何がこんなにも自分を引きつけて止まないのだろうという疑問が三人の会話の中から少しずつ、垣間みえたような気もする。
三人以上で行われる会話はおもしろい。
二人の場合、会話を続ける為に自分が話せば相手はその話を聞くしかない。聞いていて相手の話が一段落ついたらそれについて自分の意見や感想または疑問なんかを返す。その繰り返しだ。それをしなければ会話は終わってしまう。
三人以上になると熱心に話の確信に迫ろうと勢いに乗っていく人もいれば、負けじと更にそれを助長させてみたり、覆してみたりする人もいて、一方で聞いているのかいないのか、少し離れた場所からその様子を眺めている人がいたりする。
養老さんは明らかにそこに居乍ら、なんだか別のところ(それは今生きていく上で役には立たないかもしれないところ)に半分以上踏み込んでしまっているような感じがした。
だからなのか養老さんに話が振られた時、場の空気というかリズムが一瞬崩れる(リセットされる)。内田さんはご自身でも翻訳などする場合、対象物に憑依してどんどん入っていくとおしゃっていたので、会話の中でも乗ってくるとすごく深いところまで一気に入っていってしまう。森田さんも三人の中では一番若く勢いもあるので司会といいながらも、興奮し、ぐんぐん突き進んでいくという感じだ。そんな勢いに会場も巻き込まれつつある中で養老さんは一向に変化することなく、マイペースというかあるがまま。自然体を生きながら表現している。
自然には当たり前だけど(社会で・相手から)どう思われようとか、どう思われたい。といったような意識、思惑はない。だから意味があってもなくてもそこに存在する。
意味をこじつけるのは私たち人間だけだ。
養老さんの言うように「とにかく死んでいて無益ですから」というところには意味や理由などつける余地もない。だからだろうか、こんなにも狐に包まれたような思考停止状態と、それでいてずいぶんな恩恵を授かったような心地良い気持ちに浸れるのは・・・。
最後に。
内容的には興味深いことだらけでした。
・鎌倉時代「諸行無常ということ」
・「カムバック中世」日本がいずれ中世に戻ることはあるのか
・ポエティックな言葉で動く、変化する
・普通の人がいちばん怖い
・地面を踏みしめる 直感的良きものがわかる
などなど・・・
またこの二冊を読んでみて改めて振り返ることが出来ればと思います。
今回は勢い任せに書いてしまった感じが否めないので…
それでは、この辺で。
中條 美咲