クートラスは”生”が好きだった。どんな醜悪な姿でも生きているものの姿が好きだった。
クートラスは愛情のある視線に見守られていることがいつも必要だった。
クートラスの描く天使は可愛い顔をしてハートを差し出しているエロスである。
優しくて子供のように純朴な、ちょっといたずらっ子っぽい表情で飛んでくる。
それで、油断していると、一瞬のうちに、とてつもなく大きな力に揺るがされ、夜よりも深くて暗いものが身体を包んでしまう。そんな神話の入り口みたいな接吻というのがあるものだ。……『ロベール・クートラスの思い出』より
静岡県長泉町、ベルナール・ビュフェ美術館にて会期中の企画展、
ロベール・クートラス 〜僕は小さな黄金の手を探す。
「僕のご先祖さま」の一枚と出会い、直感的に惹かれた相手。
出会って、対面し、彼と晩年を共にした岸さんの著書を読み、直感は計り知れない共感となりました。
彼の”生”へのこだわり。愛を求めて与えて、使い果たしていくような繊細さ。
残されたカルトやご先祖さまの肖像のなか、クートラスはいつまでも生き続けることができる”永遠性”の居場所を生み出せたのかもしれません。
こんなにも生きることにいのちを使えた彼が、たまらなくいとおしい。