雨の瀬戸内は匂い立つ
雨とともに訪れる風を合図に疼いたように揺れ動く
そのとき「海は荒れている」ではなく
嬉々として うねり 湧き立ち 踊り出す
途切れることなく立ち上がり膨らみあっては
どっぷんどっぷん重なり合って
漣が引いていく姿に 目を奪われるばかりか
引き込まれ 飲み込まれ まるごと揺らめき
波の奥に潜む生々しさを感じるばかり
晴れて静かな瀬戸内はやさしいけれど
雨の瀬戸内は祭りのように匂い立ち
いのちの何かが湧き上がる
静けさと生々しさと
生きている海の気配しか感じることができない私たちは
時折その奥に隠された「匂い」に弄ばれる