「金継ぎとつなぎ場とBUKATSUDO」トークを聴いて。

先日、横浜「街のシェアスペース BUKATSUDO」で行われた ナカムラクニオさんと、内沼晋太郎さんのトークに参加して。そこで話された内容と、そこから感じたことをまとめていきます。

前回参照:BUKATSUDOの文化祭。勝手に潜入レポートの巻。

DSCF5593
BUKATSUDOのつなぎ場の一部。

はじめにナカムラクニオさんについてですが、わたしが一番はじめにナカムラさんの存在を知ったのは、屋久島ナイトの行われた2011年か12年ごろだったと思います。その頃はまだ、6次元という場所がどういう場所であるのか、ナカムラさんがどんな活躍をされているのか知ることもなく、以前屋久島でガイドを担当していただいた小原さんが講師にいらっしゃる。とのことで参加を決めました。

話が脱線しますが、どうして屋久島で小原さんにガイドを申し込んだかといえば、田口ランディさんの『ひかりのあめふる屋久島』という本を読んだことがきっかけでした。

とても良い本ですが、おそらく今は中古本でしか手に入れることができないのではないかと。
近日中にまた、屋久島ナイトが行われるようですので気になる方はチェックです!(わたしは残念ながら間に合いません。。)

6/22(月)「屋久島ナイト ~最新情報と古代情報」

 

話を戻します。
冒頭、ナカムラさんは実は6年前まで、某テレビ局でディレクターのお仕事をされていたというところから話が始まりました。なので、初めの数年間はテレビの仕事を続けながら掛け持ちをして、6次元を経営されていたということです。
今では、ノーベル文学賞の発表の度にテレビ中継されてしまうほど、世界中の村上春樹ファンにとっての聖地巡礼の場所となりつつあるようですが、それは読書会をはじめたことがきっかけだったのだとか。最近では、三鷹の森ジブリ美術館と荻窪6次元は、海外のジブリファン・ハルキファンにとっての定番スポットとなり、1日数十人訪ねてくることもあるというお話が、ピンポイント過ぎて面白い現象だなぁと思いました。

その一方でナカムラさんは、日本各地での読書会、詩の朗読会、本屋さんでの巡業イベントや、地方の活性化に向けたお仕事など、今まで埋もれてしまっていた・まだ発掘されていないコンテンツを裏から支えることによって、新しいつなぎ場ができるんじゃないかとお話されていました。

ちなみに最近では、わざと色んなことをするように意識している部分もあるのだそう。
これはナカムラさんに限った話ではなく、今世の中で大きな組織に属さずに活躍している方の共通点のようにも思います。
大きい会社であれば、予算はもともと組まれていますし、その金額内でどんな内容のイベントにして集客・利益を生み出せるか。予算ありきで話が始まるでしょうし、それとは別に毎月決まった額のお給料に加え、ボーナスがある。
そういった会社員であることの利点を存分に知っているからこそ、より一層、自分たちの活動を継続させていくためにどうやって運営資金そのものをはじめ、利益を生み出していくのかという経営者的視点は欠かせないものだなと。

なので、お二人が共通しておっしゃっていたことは、ゆったりとした環境や理想的な場を作りたいという若い人は、現実的にコーヒー1杯500円が1日何杯売れて、その利益の中で家賃や光熱費諸々維持していけるのか、現実的に考え、早いうちに失敗して方向転換することの重要さというか見極め方についてもかなりオープンにお話されていて、信頼できる言葉だと思いました。

トークのテーマである「金継ぎとつなぎ場」のお話では、元々ナカムラさんご自身が骨董品の収集を20年近く行っていたこともあり、欠けているものや修復の必要なものを自分の手によって直せるようになるとすごく面白く、それがきっかけとなりイベントを始めてみたら、思った以上の反響があり、金継ぎの持っている価値は欠けたものを直すだけじゃないと気づいたというお話が印象的でした。
器を(金継ぎで)つなげるのも、本によって人をつなげるのも、欠けた人々をつなげていくのも一緒。金継ぎで人が繋がっていく。

そして震災後、南相馬の市役所の方から器を直しに来て欲しいという依頼があって行ってみたところ、紙ものの写真や手紙などあらゆるものは津波で流されてしまっても、唯一、欠けた器物などを見つけて形見にしている方が多く、修復して回るプロジェクトを行ったところ、本当に多くの方に喜ばれ、なおす費用がかかっているにもかかわらず、お礼のメールやお手紙をいただき、金継ぎは欠けたもの以上に、その先にあるものを直していくと思うようになったことが「金継ぎとつなぎ場」に繋がっていると。

内沼さんは、松浦弥太郎さんがクックパッドに移られたことや、ユトレヒトの方(どなたか聞き漏らしてしまいました)が最近お酒づくりに転身された話題をきっかけに、周辺では激震が走り、本屋業界的にもそれを受けてかここ数ヶ月で大きく変化が起こり、今はちょうど境目のような気がすると。本屋さん自体の多角化、もっと色んなパターンがありになってくるのではないか、逆にいうと、大きなプレイヤーは大変な時代。ある大型書店さんで前例にならって、本×雑貨×カフェをはじめたところで、やっただけ、それでなんなのか、かたちだけでは中身がすっぽりと抜け落ちてしまい、もったいないというお話もありました。
消費者自身の目がどこへ向かっているのか、本質があってのそのかたち、姿なのか。見せかけだけなのか。そういったところは今後ますます意識をしていかないと、難しい時代になっているということは、お二人のお話からもひしひしと伝わってきました。

そして場をつくること、人と人が出会う場というのは、必ずしも「店」じゃなくても大丈夫。むしろイベントの方がこれからはいいかもよというところで1時間のトークは終わりました。

 

まとめ。

わたしはよく、気になった方の講演やトークには足を運んでいるのですが、今回のお二人のトークはいい意味でかなり力の抜けたリラックスした雰囲気で行われ、お話自体、ここまで話してしまっていいんだろうか。ということもさらりと開示されていて、本当に充実した内容のトークでした。

トーク関連:
鈴木書店とAERAと蔦屋。
高畑作品の背景で織り成す『音楽』から広がる世界
新しい地図の描きかた
光と風と火と女。
写真、光の描き出すもの

私見ではありますが、普段お二人はどちらかというと表舞台ではなく、舞台裏からコンテンツを発掘したり、磨き上げたりされている立場ということが関係していることもあってか、プレイヤーでありながら、全体を俯瞰して現実の物事を把握している。プレイの方に熱中しすぎない距離感やそのバランス感覚が、盲目的でなく、聴いていてとても心地よかったです。

そして「人と人をつなぐ場」でいうと、本当はつなぐため、つながるための媒介はなんでも良いのかもしれません。1冊の本、そこにいる人、そこで売っているもの、常にそこにあるお店。
もちろんその本に出会いたいし、もっと深く知りたいし、そこに売っているものを手にしたい。という気持ちが一番の目的だったとしても、ほんとうは、せっかくなら、そこに集った人とつながったりコミュニケーションをとったり、自分の今ある世界を広げてみたい。

モノを買うことでは満足が得られないと思い始めると、人々は自然と新たな人との出会いやつながり、自分の世界をもうすこし深めたり広めたり、確かなもの(手触り・肌感覚のあるもの)にしていきたいと思ったりするのでしょうか。それはわたしに限ったことではないはず。
そんなわけで、とても学びの多い1時間となりました。

 

最後に
上に書いた内容は、わたしが見て聞いて感じたことを自分なりに(好き勝手に)つなぎ合わせたものになっています。多少の思い違いや受け取り違いはあしからず・・・です!

 

それではこの辺で。

中條 美咲