夏の予感と、つぶつぶ暗いクラムボン。

東京に出てきたばかりで、あまりにも不安げに頼りない日々を過ごしてきたことを思い返しながらも、この季節になると必ず、振り返らずにはいられない曲がある。

まだまだ涼しい夜風には少しずつ湿気の気配が高まり、これからさらに湿度が高まり、あのうだるような夏が来ることを思うと、待ち遠しいような、少しこわいような、なんとも浮ついた心持ちになる。

夏までのカウントダウン。定番といえばClammbonの3peace〜live at 百年蔵〜。

当時のセンチメンタルを最大限に感じられる曲といえば福岡の生んだ名曲、「波よせて」なのだけど、最近はめっきり「Folklore」から聴き始め、「バイタルサイン」「カルアミルク」「波よせて」「ナイトクルージング」「サマーヌード」というあたりでぐるぐると回転する日々。

そして雨が降ったらidがちょうどいい。

曲名の「Folklore」とは、古く伝わる風習や伝承という意味。
このことばにはじわじわと、ぐんぐんと、近づこうとすればするほど引き寄せられて巻き込まれていく。

あの頃のセンチメンタルを飛び越えて、海の向こうからやってくるこの風が運んでくるものは何者か。

乾燥の大地には似つかわしくない、このじわついた夏の手前を的確に表現しいている「Folklore」がたまらなく好きなのです。

夜風を見にまとい、どこへでも飛んでゆけたら、さぞかし気持ちがいいだろう。

待ち遠しい夏、おそろしい夏。

この国の夏は、ほかには比べ物にならないような、一種独特の気配と予感が漂い潜んでいる。

 

そんな妄想を膨らませながら、久しぶりに気持ちのよい野外ライヴに行きたくなった。

 

『クラムボンはわらっていたよ。』

『クラムボンはぷかぷかわらったよ。』

『それならなぜクラムボンはわらったの。』

『知らない』

              ー 宮沢 賢治

 

遠くまでいきたい。夏の気配にざわざわ、浮き足立つばかり。

 

 

それでは。

中條 美咲